採用、評価、配置、労務。これらは、これからも人事に必要です。しかし、AIが仕事の一部を担い、職種の境界が変わり、プロジェクトごとに必要な能力が組み替わる時代に、従来の制度を精緻に運用するだけで十分でしょうか。
変化の中心にあるのは、AIツールの導入ではありません。人事が扱う単位そのものが変わることです。部署、役職、職種という固定的な箱だけでなく、スキル、仕事、関係、状況、AIとの役割分担を扱う必要が生まれています。
これからの人事は、人を管理する部門ではなく、
人とAIが力を発揮できる組織を設計する部門になる。
変わるのは、制度より先に「人事の問い」
従来の人事では、「この職種に誰を採用するか」「この人をどの部署に配置するか」「評価をどう公平に運用するか」が中心的な問いでした。これからは、その手前に別の問いが必要になります。
- この仕事は、どのタスクと判断から成り立っているか
- 人が担うべき意味判断と責任は何か
- AIに任せられる整理・生成・定型処理は何か
- この人が力を発揮するために、誰とどのように働く必要があるか
- 情報はチーム内をどのように流れ、どこで滞っているか
- 施策が有効だったかを、いつ、何によって確かめるか
つまり、「人をどこに置くか」だけでなく、仕事、権限、関係、情報循環をどう組み合わせるかが人事の課題になります。
| 従来の中心 | これから加わる視点 |
|---|---|
| 職種・役職 | スキル・仕事・役割 |
| 個人の評価 | 個人と環境、関係の条件 |
| 年次の把握 | 継続的な観測と短い改善周期 |
| 一律の育成 | 役割と理解方法に応じた成長支援 |
| AIによる効率化 | 人とAIの仕事・権限・責任の設計 |
これからの人事を考える7つの設計論点
以下の七つは、未来を一つの型で断定するものではありません。WEF、ILO、OECD、ISOなどが示す労働・スキル・AI・人的資本の変化を、人事が自社で検討できる論点として整理したものです。
- 01SKILLS-BASED ORGANIZATION
役職だけでなく、スキルで仕事と人を結ぶ
肩書や学歴だけでは、実際にできることや学んできたことを十分に捉えられません。必要な仕事を具体化し、本人のスキル、経験、学習可能性と結びつけることで、採用だけでなく社内移動や育成の選択肢が広がります。
- 02WORK DESIGN
職種を固定せず、仕事を分解して再設計する
「営業」「人事」「エンジニア」という職種の中にも、情報整理、対話、判断、交渉、記録など異なる仕事があります。AIの導入では、職種を丸ごと置き換える発想より、タスクごとに人とAIの役割を設計する視点が重要です。
- 03PEOPLE ANALYTICS
印象だけでなく、組織データから考える
データは判断を自動化するためではなく、見落としていた問いを見つけるために使えます。ただし、測定値、本人の自己申告、理論からの仮説、まだ確認できていないことを混同しない設計が必要です。
- 04EMPLOYEE EXPERIENCE
制度ではなく、働く体験を一続きで見る
入社、配属、1on1、成長、評価、異動が別々の制度として最適化されても、本人の体験が分断されていれば機能しません。社員の時間軸から、接点と移行を設計し直す必要があります。
- 05PERSONALIZED DEVELOPMENT
全員同じ育成から、条件に合う成長支援へ
同じ説明、同じ研修、同じフィードバックが、全員に同じように届くとは限りません。本人の役割、理解しやすい順序、現在の課題に合わせて学び方や任せ方を調整します。これは人を固定的に分類することとは異なります。
- 06ORGANIZATIONAL NETWORK
組織図に加えて、実際の関係と情報の流れを見る
公式の報告線と、実際に相談や意思決定が行われる経路は同じとは限りません。誰に情報が集まり、誰が橋渡しをし、どこに負荷が集中するかを見ることで、個人の問題に見えたものを構造として捉え直せます。
- 07HUMAN CAPITAL
人件費ではなく、将来価値を生む基盤として捉える
人的資本は、人数や研修時間を開示することだけではありません。スキル、リーダーシップ、文化、関係、働く状態が、どのように事業の持続性へつながるかを説明し、改善する営みです。
七つは国際的な変化を整理した編集上の枠組みです。「七つが国際標準として定義されている」という意味ではありません。また、外部資料はTeam Lens固有の理論や製品効果を証明するものではありません。
データを増やすだけでは、組織は見えない
多くの企業には、すでに採用情報、評価、勤怠、サーベイ、1on1記録、スキル情報があります。問題は、データが少ないことだけではありません。それぞれが別の目的、別のシステム、別の時点で管理され、一人の働く体験やチームの文脈としてつながっていないことです。
たとえば離職を、本人の意欲や能力だけに還元することはできません。期待された役割、上司との伝達、業務負荷、評価の納得感、成長実感、相談経路などが重なって起きます。個人のデータだけではなく、個人と個人の「あいだ」、個人と役割の「あいだ」を見る必要があります。
回答、行動、実施記録など、確認できる情報。
理論やデータから考えられる可能性。事実とは分ける。
本人や関係者との確認を経て、文脈を持った情報。
無理に埋めず、次に確認する問いとして残す。
人事データを統合するほど、プライバシーと権限設計は重要になります。個人の相談や健康情報を、組織の都合で無制限に可視化してはなりません。観測できることと、観測してよいことは同じではありません。
AIを導入する前に、人とAIの責任を設計する
ILOの2025年の分析は、生成AIにさらされる仕事の多くで、人間の入力が引き続き必要であり、全面的な代替より仕事の変容が起きる可能性を示しています。大切なのは「AIを使うか、使わないか」という二択ではなく、仕事を分解し、役割を決めることです。
人が担う
意味づけ、倫理判断、共感、関係構築、最終意思決定、説明責任。
AIが支援する
情報整理、パターン候補、選択肢生成、記録、要約、定型処理。
共同で支える
1on1準備、学習支援、比較検討、組織分析、改善の振り返り。
特に人事では、採用、評価、昇進、配置など、人の生活へ大きな影響を与える判断があります。AIは材料を整理できても、最終判断と責任まで引き受ける主体ではありません。誰が説明できるのか、異議を申し立てられるのか、どの情報を使わないのかまで設計する必要があります。
大きなシステム導入より、一つの問いから始める
次世代人事という言葉は壮大に聞こえます。しかし、始め方は小さくて構いません。重要なのは、ツール導入を目的にせず、組織として変えたい状態を定めることです。
- 1目的を一つ決める
例:管理職の1on1を、近況確認から次の行動を決める対話へ変える。
- 2現在の状態を観測する
誰のせいかではなく、役割、関係、伝達、負荷、情報の流れを確認する。
- 330日で試せる行動を決める
制度改定より先に、会議の順序、問い、情報共有など小さな運用を変える。
- 4何が変わったかを確かめる
「当たったか」ではなく、対話、意思決定、行動に役立ったかを確認する。
Team Lensという実装
ここまで見てきた変化に対して、Team Lensはすべての人事システムを置き換える製品ではありません。現在は、個人と関係の理解を、対話、30日行動、継続的な振り返りへつなぐ層として設計されています。
個人・関係レポート、組織・部門のLens、1on1と伝え方支援、採用面接の確認質問、匿名条件を持つチェックイン、30日行動と四半期の振り返り。
スキルグラフ、プロジェクト実績、高度な組織ネットワーク分析、人とAIの仕事分解。現在の機能と混同せず、段階的に検討します。
個人を点数で評価し、人事判断を自動化するのではなく、観測、理解、設計、改善を循環させる。そのための一つの実装がTeam Lensです。
参照資料
- World Economic Forum, The Future of Jobs Report 2025 — Workforce strategies ↗スキルギャップ、アップスキリング、AIと人の仕事に関する企業調査。
- International Labour Organization, Generative AI and Jobs: A 2025 Update ↗職業をタスク単位で捉えた生成AIへの曝露と、代替より変容が中心になる可能性。
- OECD, Using AI in the Workplace ↗職場でのAI活用の機会、リスク、信頼できる導入に向けた論点。
- ISO 30414:2025, Human capital reporting and disclosure ↗スキル、能力開発、文化、エンゲージメントなど人的資本報告の国際規格。
