Model T · V.L.Taranov 2006
モデルT
A Neurophysiological Model of Socionics Functions
V.L.タラノフが2006年に提唱した神経生理学的モデル。ユングの4機能(直観・感覚・論理・倫理)の各ポジションを、興奮フィルター(H/L)と抑制フィルター(H/L)という2つの神経生理学的パラメータで記述する。対象は4つのポジション(プログラム・創造・接触・動員)のみ。このモデルの核心的発見は「プログラム機能は常にアンバランスで、創造機能は常にバランスが取れている」という構造的法則にある。
MT
Section 01
モデルTとは
What is Model T
モデルAは「主導機能は強い」「脆弱機能は弱い」という定性的な記述にとどまっていた。タラノフはここに問いを立てた——その「強さ」の神経生理学的な根拠は何か。答えとして提示されたのが、興奮チャンネルと抑制チャンネルの閾値設定というモデルである。
モデルTが記述するのは4つのポジション:プログラム(①)・創造(②)・接触(③)・動員(④)。これはモデルAのメンタルリング前半に相当する。各ポジションの機能は「どの強さの信号で発火するか(興奮)」「どの強さの信号で停止するか(抑制)」の2軸で規定される。
「プログラム機能と動員機能の興奮性値と抑制性値が異なる(アンバランス)。創造機能と接触機能の興奮性値と抑制性値が同じ(バランス)。」
V.L.Taranov, 2006 — モデルTの基本法則
4
Section 02
4つの機能ポジション
The Four Function Positions
タラノフはモデルAのメンタルリングの4機能をそれぞれ次の名称で呼ぶ。これはオーガスタの命名(主導・創造・役割・脆弱)と一部異なる点に注意。
①
プログラム機能
Program Function
アンバランス
TIMの中核をなす機能。興奮フィルターと抑制フィルターの値が異なる(アンバランス)ため、自律的・持続的に稼働する。「やめにくい」特性の根拠。モデルAの主導機能(①)に対応。
②
創造機能
Creative Function
バランス
プログラム機能の目的を実現するための柔軟な実装手段。興奮と抑制が同値(バランス)のため、状況に応じた切り替えが容易。「使いやすく多様な対応が可能」な特性。モデルAの創造機能(②)に対応。
③
接触機能
Contact Function
バランス
外部との「接触」を通じて情報を受け取る機能。バランス型のため、外部信号に柔軟に応答する。プログラム機能を一時的に抑制できる唯一の機能。モデルAの役割機能(③)に対応。
④
動員機能
Activation Function
アンバランス
外的刺激によって「動員」される機能。アンバランス型のため、接触機能から制御されやすい。プログラム機能から発された信号が最後に届く場所。モデルAの脆弱機能(④)に対応。
タラノフの呼称 vs オーガスタの呼称:タラノフは③を「役割(Role)」ではなく「接触(Contact)」、④を「脆弱(Vulnerable)」ではなく「動員(Activation)」と呼ぶ。機能の番号と要素は同じだが、その心理的役割に対するフォーカスが異なる。
⚙
Section 03
2つのフィルター
Two Independent Filters
モデルTの最重要原理:興奮フィルターと抑制フィルターは完全に独立した2軸であり、それぞれのH/Lが表す概念はまったく異なる。
興奮フィルター(Excitatory Filter)
On スイッチ — TIMの外向性/内向性
H/Lの値はTIM全体の外向性・内向性を反映する。要素の外向/内向ではない。外向型TIMの最初2機能はH、内向型はL。後の2機能(③④)は逆転する。
H外向性(Extraversion)
高強度信号への選択的チューニング。外向型TIMの①②に現れる。
高強度信号への選択的チューニング。外向型TIMの①②に現れる。
L内向性(Introversion)
低強度信号への選択的チューニング。内向型TIMの①②に現れる。
低強度信号への選択的チューニング。内向型TIMの①②に現れる。
抑制フィルター(Inhibitory Filter)
Off スイッチ — 要素の色(黒/白)
H/Lの値は要素の「色」(黒色/白色)を反映する。TIMの方向性とは無関係。黒色要素はL(外交性)、白色要素はH(親密性)。
H親密性(Intimacy)
白色要素(Ni·Si·Ti·Fi)が持つ特性。エネルギーを内側に保持する。
白色要素(Ni·Si·Ti·Fi)が持つ特性。エネルギーを内側に保持する。
L外交性(Extratimacy)
黒色要素(Ne·Se·Te·Fe)が持つ特性。エネルギーを外側へ放出する。
黒色要素(Ne·Se·Te·Fe)が持つ特性。エネルギーを外側へ放出する。
4概念の独立性:外向性(H興奮)・内向性(L興奮)・親密性(H抑制)・外交性(L抑制)は独立した4概念。例えばILEの①Ne:ILE自体が外向型TIM → 興奮H、NeはNeなので黒色要素 → 抑制L(外交性)。NeだからHではない。
要素記号:I / S / L / E
タラノフは各機能を上段:興奮フィルター / 中段:要素記号 / 下段:抑制フィルターの3段図式で表す。中段の記号はユングの4機能ドメインをアルファベット1文字で示す。
I
Intuition(直観)
Intuition
Ne(黒)· Ni(白)
Ne → 抑制L(外交性)
Ni → 抑制H(親密性)
Ni → 抑制H(親密性)
S
Sensing(感覚)
Sensing / Force
Se(黒)· Si(白)
Se → 抑制L(外交性)
Si → 抑制H(親密性)
Si → 抑制H(親密性)
L
Logic(論理)
Logic / Law
Te(黒)· Ti(白)
Te → 抑制L(外交性)
Ti → 抑制H(親密性)
Ti → 抑制H(親密性)
E
Ethics(倫理)
Ethics / Relation
Fe(黒)· Fi(白)
Fe → 抑制L(外交性)
Fi → 抑制H(親密性)
Fi → 抑制H(親密性)
ILE の3段バッジ例(PDFより):
H
I
L
① Ne
外向性/直観/外交性
外向性/直観/外交性
H
L
H
② Ti
外向性/論理/親密性
外向性/論理/親密性
L
S
L
③ Se
内向性/感覚/外交性
内向性/感覚/外交性
L
E
H
④ Fi
内向性/倫理/親密性
内向性/倫理/親密性
⚖
Section 04
バランスとアンバランス
Balanced & Unbalanced Functions
モデルTの中心的発見:プログラム機能(①)と動員機能(④)は常にアンバランス、創造機能(②)と接触機能(③)は常にバランスが取れている。
アンバランス(ex ≠ inh)
プログラム(①)と動員(④)
H
I
L
外向TIM ①
L
E
H
外向TIM ④
興奮と抑制の値が異なる。自律的・持続的に稼働し、切り替えが難しい。「プログラム機能の止められない情熱」「動員機能の強烈な反応」の根拠。
バランス(ex = inh)
創造(②)と接触(③)
H
L
H
外向TIM ②
L
S
L
外向TIM ③
興奮と抑制の値が同じ。状況に応じた柔軟な応答が可能で切り替えやすい。「創造機能の多様な対応力」「接触機能のプログラム抑制」の根拠。
バランスの決定メカニズム:
外向TIM(H興奮)+ 白色要素(H抑制)= H/H バランス(例:ILE ②Ti)
外向TIM(H興奮)+ 黒色要素(L抑制)= H/L アンバランス(例:ILE ①Ne)
内向TIM(L興奮)+ 白色要素(H抑制)= L/H アンバランス(例:LII ①Ti)
内向TIM(L興奮)+ 黒色要素(L抑制)= L/L バランス(例:LII ②Ne)
外向TIM(H興奮)+ 白色要素(H抑制)= H/H バランス(例:ILE ②Ti)
外向TIM(H興奮)+ 黒色要素(L抑制)= H/L アンバランス(例:ILE ①Ne)
内向TIM(L興奮)+ 白色要素(H抑制)= L/H アンバランス(例:LII ①Ti)
内向TIM(L興奮)+ 黒色要素(L抑制)= L/L バランス(例:LII ②Ne)
2つのルール(PDFより):
興奮フィルタールール:①②の興奮フィルターは同じ値。外向型はH、内向型はL。③④は①②と逆転する。
抑制フィルタールール:抑制フィルターの値は要素の色(黒=L/白=H)で決まり、隣り合う機能間で交互に変化する。最初の機能の抑制値は興奮値と逆になる。
興奮フィルタールール:①②の興奮フィルターは同じ値。外向型はH、内向型はL。③④は①②と逆転する。
抑制フィルタールール:抑制フィルターの値は要素の色(黒=L/白=H)で決まり、隣り合う機能間で交互に変化する。最初の機能の抑制値は興奮値と逆になる。
16
Section 05
全16タイプ一覧
All 16 Types — Model T Formulas
タラノフのPDF(表1)に掲載された全16タイプのモデルTフォーミュラ。左から順に①プログラム・②創造・③接触・④動員。
| タイプ | 日本語名 | ① プログラム ② 創造 ③ 接触 ④ 動員 |
|---|---|---|
| ILE | 探究者 |
H I L H L H L S L L E H |
| SEI | 調停者 |
L S H L E L H I H H L L |
| ESE | 熱狂者 |
H E L H S H L L L L I H |
| LII | 分析家 |
L L H L I L H E H H S L |
| EIE | 英雄 |
H E L H I H L L L L S H |
| LSI | 検査官 |
L L H L S L H E H H I L |
| SLE | 改革者 |
H S L H L H L I L L E H |
| IEI | 預言者 |
L I H L E L H S H H L L |
| SEE | 政治家 |
H S L H E H L I L L L H |
| ILI | 批評家 |
L I H L L L H S H H E L |
| LIE | 起業家 |
H L L H I H L E L L S H |
| ESI | 守護者 |
L E H L S L H L H H I L |
| LSE | 管理者 |
H L L H S H L E L L I H |
| EII | 人道主義者 |
L E H L I L H L H H S L |
| IEE | 相談役 |
H I L H E H L S L L L H |
| SLI | 職人 |
L S H L L L H I H H E L |
MK
Section 06
Model K — タラノフ理論の拡張
Extension in Model K
タラノフのオリジナルモデルTはH/L の2値のみで記述される。日本ソシオニクス協会のModel Kはこれを出発点として2つのパラメータを追加し、より精密な記述体系へと拡張した。
タラノフのモデルT(原典)
2パラメータ × 4ポジション
興奮(H/L) × 抑制(H/L)
→ 4パターン
→ 4パターン
H
I
L
L
I
H
L
I
L
H
I
H
Model K の拡張
4パラメータ × 4ポジション
興奮(H/L) × 様式(T/P) × 抑制(H/L) × 方向(R/E)
→ 16パターン
→ 16パターン
拡張パラメータ I
T/P(Tonic / Phasic)
興奮の時間的パターン。T(持続性):一度点火すると長時間維持。P(瞬発性):短時間で激しく発火してすぐ収束。
拡張パラメータ II
R/E(Repressive / Expressive)
抑制の方向性。R(内向抑制):エネルギーを内側に締め込む。E(外向放出):エネルギーを外側に行動・発言として放出。
Model Kの64機能コード体系との接続:モデルTのH/L二値とModel KのT/P・R/E拡張を組み合わせることで、各機能コード(+Ne-p, -Ti-c 等の64コード)はそれぞれ固有の「神経生理学的プロファイル」を持つ。例えば+Ne-pはHT/LE(高強度持続型興奮 / 低閾値外向放出)、-Ti-cはHP/HE(高強度瞬発型興奮 / 高閾値外向放出)として記述される。
